目次・索引・著者紹介
第3章
目的いろいろインターネット活用術――2の3
<実験計画の立て方>
実験材料の調査と入手の手配
―細胞バンク,実験動物
水沢 博
実験計画の立案には使用する実験材料を入手するための手配が不可欠で,医学・薬学などの生物系の研究ではことのほか重要である.研究体制が未成熟だった段階では文献調査などから見出した培養細胞などを個人的なつながりなどを頼って入手していたが,現在では細胞バンクなどの公的機関から入手することが一般的になってきている.理由はさまざまあるが,とりわけ重要な理由は,マイコプラズマなどによる汚染や操作ミスなどによる細胞の誤謬などの心配がない研究材料を入手できる点などがあげられる.また,そうした細胞の質に関する実験的な根拠に関する情報なども整理されて入手できる点などもメリットとなっている.細胞バンクを運営する側の基本原則が「正確な細胞を保存することに加えて関連する情報を整理して公開すること」にあることを考えれば当然のメリットということになる.
1.インターネットによる研究資源の検索
コンピュータ技術の発展と普及の結果,1980年代に入って多くの細胞バンクが学術的情報を電子ファイル化しデータベース化して管理するようになってきていたため,インターネットへの情報提供も比較的スムーズに始まっているようである.
一度データベースに記録された情報は,記録形式さえ整っていれば長期間の保存に耐えて,さほどの手間や暇をかけることなく必要な時に必要な形式で出力できるため,インターネットなどへの情報提供を有効に実施できることになる.利用者側のメリットというよりは細胞バンクを運営する側にとって大変魅力的な道具なのである.これまでは,細胞バンクからの情報と言えばカタログなどの紙に印刷したハードなものを指してきたが,ここ2〜3年来のインターネットの普及はこの考え方を急速に変えつつある.
現在では,国内,欧米の主だった細胞バンクは印刷されたカタログの発行と同時にインターネット上のホームページにカタログを公開している.しかし,インターネットによる情報は便利である反面,同時に複数のページを参照しにくいため使いにくいという声も聞く.そのため,書籍によるカタログも手元に置いておきたいものである.しかし,電子ファイルは柔軟なため,頻繁に修正していることもあるので,最初は書籍カタログを参照し,ある程度目的が絞りこまれてきた段階で必ずインターネットから最新情報を取るものであると考えておくとよいであろう.筆者が管理しているJCRB細胞バンクでも,ホームページのデータは月に1回程度は更新している.
また,インターネットのWWWでは情報源相互のリンクも大変簡単に構築できるため,細胞の性質に関する情報から関連の分子生物学情報へ飛べるようにデザインしているケースもある.こうした事情を考慮すれば,自由にインターネットにアクセスできるような研究環境を構築しておくことは今後ますます重要性を増すであろう.
2.培養細胞の保存管理をしている細胞バンク
WWWのホームページを開設している細胞バンクは,国内では国立衛生試験所:JCRB Cellbank(東京)<http://cellbank.nihs.go.jp>(図1)<変更>と理研細胞バンク(つくば市)<http://www.rtc.riken.go.jp/>(図2),米国ではATCC(American Type Culture Collection)<http://www.atcc.org/>(図3),ヨーロッパではECACC(European Collection of Animal Cell Culture) <gopher://merlot.gdb.org/11/ Database-local/cultures/ecacc>(図4)が知られている.これら以外にも培養生物を保存管理している組織の連合体であるWFCC(World Federation for Culture Collections)<http://www.wdcm.riken.go.jp/>(図5)では培養生物を収集している組織情報を世界中から収集してインターネット上に公開している.国内では,理化学研究所の情報室(和光市)<http://www.wdcm.riken.go.jp/WDCHomePage2.html>(図6)がアジア地区センターとして活動しており,研究資源を保管している多くの施設のサーバにリンクが張られている.
 図1 JCRB細胞バンクのホームページ(HSRBを含む) |  図2 理研細胞銀行のホームページ |
 図3 ATCCのホームページ |  図4 ECACCのホームページ(gopher) |
 図5 WFCCのホームページ |  図6 理化学研究所のホームページ |
細胞バンクからの情報はほとんどの場合WWWが利用されているが,ECACCではgopherサーバを使用している.いずれにしてもWWW Navigatorによりアクセスすることができるのでユーザが特に意識する必要はない.多数の情報源へのアクセスは結構面倒なものであるが,相互にリンクが“クモの糸”のように張られているので,取りあえずどこか1カ所にアクセスできれば後はイモヅル式に参照できるようになっているのが普通である.培養研究資源の場合,国内で最も整備されているサーバは理研情報室(和光市)のサーバである.
3.検索の実際
細胞バンクは多数の細胞情報を公開しているが,利用者側から見ると必ずしもすべての細胞情報をまんべんなく見る必要はない.そこで,多くの場合,掲載情報を何らかの形式によって検索するシステムを備えているのが普通である.一般的にはWWWで普及しているWAIS検索システムが使われていることが多い.WAIS検索システムの例としてATCCを,それ以外の検索システムの例としてJCRBの場合を紹介する.
ATCCのホームページではWAIS検索を使用しており,まず検索ページに入る(図7).そこで,検索したいデータベースをチェックし(該当箇所をクリックする),検索語(キーワード)を半角英文字でタイプ入力してから,「start search」と書かれたボタンをクリックする.ここでは例として「HeLa」を検索語として入力した.するとほどなく図8のような検索結果が表示され,ヒットした細胞情報が一覧表で表示される.ここでは18件しか表示されなかったので,最初から順番にクリックして中味を見ることができる.例えば,11番目の行を選択すると図9の画面が現れ,細胞の詳細な情報が表示される.この記載内容は,書籍で出版されているATCC Catalogue of Cell Lines and Hybridomasと同じものである.カタログに記載されているATCCの沿革などもトップメニューのページから参照できるようになっているし,細胞の入手依頼法や細胞ごとの価格についても記載されているので便利であろう.
図7 ATTCのWAIS検索ページ
図8 WAIS検索の結果
図9 検索結果から情報を引き出す
JCRBの場合は,WWWホームページを開設してまだ間もないため,スタイル等が固定化されておらず,頻繁に改訂が繰り返されている.1996年4月現在,HTMLで書かれていたデータベースをFOLIOサーバ(図10)に変更する作業が進行中である.細胞の種類や記述内容については,ATCCに比べると少ないが,細胞ごとに品質管理実験の結果や画像データを添付したり,文献にはアブストラクトまで含めたり(図11),さまざまな工夫をこらしているので一度参照してみていただきたい.
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図10 JCRB細胞バンクカタログのオープニング ページ(htmlからFolioへのブリッジ) | 図11 FOLIOサーバによる細胞情報の表示 |
JCRBが使用しているFOLIOによる検索システムは検索結果の中間表示法が大変ユニークでわかりやすくできている(図12).図の「Query」ボックスに「lymphocyte and(human or mouse)」などのように論理式で検索語を入力してサーチボタンをクリックすると,結果を示すボックス(Results Map)にツリー構造でキーワードごとのヒット件数が表示される.そこで本の形をした「Document」アイコンをクリックすると,最終検索結果としてヒットしたレコードの内容が表示される.上部の「Next hit」アイコンによってヒットしたレコードだけを順次たどって読むことができる.ただし,ここでは検索結果を順番にたどるだけで,ランダムに読むことはできないので,検索結果があまり多くならないようヒット数を見ながらキーワードを上手に使って絞り込み検索をすることがコツである.
図12 FOLIOの検索システム
4.実験動物
実験動物については,各研究機関や大学に動物実験施設が付置されている場合も多く,それぞれの施設で飼育している動物についても情報がほしいところである.国内の各実験動物保存施設では,インターネットの普及に伴って,情報の公開を開始し始めたところのようで,現時点では必ずしも情報量が豊富とは言いがたいが,今後急速に充実してくるものと思われる.1996年初頭現在,国内では大阪大学医学部附属動物実験施設から公開されているWWWサーバが最もよく整備されおり,他の実験動物施設へのリンクも充実している <http://hayato.med.osaka-u.ac.jp/index-j.html>(図13).
国際的には米国のJackson研究所のホームページが大変に充実しているので是非参照していただきたい <http://www.jax.org/>(図14).特に遺伝的な変異株についての情報も充実している点は注目に値する.最近では特定の遺伝子を導入したトランスジェニックマウスなどは種々の研究に不可欠であり,そうした情報を幅広く収集することは研究の推進に不可欠であろう.
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図13 大阪大学医学部附属動物実験施設の WWWサーバ | 図14 Jackson研究所のホームページ |