研究室に行くと、まっさきに自分の机の上にノートパソコンを置いてLANに接続し 電子メールを読み出す。昨夜からのメールが20通ほど一覧表で出るので、重要なも のから読んで、返事が必要な物はすぐ書く。メールがたまり出すと返事を書くのが苦 痛になるので、読んだ瞬間に返事を出すのがよい。以後メールは15分に1回チェッ クするようになっているので、研究室にいる限りはすぐ返事が出せるようになってい る。忙しいときは、必要でなさそうなメールは未読のまま受信簿からごみ箱に捨てて しまう。メールを処理したら実験室に行き実験を始める。同時に実験室のパソコンに も電源を入れてNetscapeを立ち上げる。思えば、始めてインターネットを使った頃は 、モデムを使って2400bpsという速度で通信していたが、やがて学内のネットワーク 経由で9600bpsとなりいつしか64Kbpsから512Kbpsまでアップした。かつて、2400bps の回線で自分の研究テーマであるヒトサイトメガロウイルスの全塩基配列229Kbp(22 9キロボーじゃなくて229キロベースペアー)のデータを、30分かけて取ってきた時 代が懐かしく感じられる。しかし私の勤務する総合大学ではユーザーが多いので午前 10時を過ぎると実効速度が相当低下する。夜になるとまた回復するので、大事な調 べ物は昼間をさけて行うようにしている。幸いDNA試料を制限酵素で切断する実験 なので、インキュベートの間にWWWでデータベースにアクセスする。理化学研究所の 細胞バンク(WFCC World Data Centre for Microorganisms,URL=http://www.wdcm.riken.go.jp/)にアクセスして、欲しいバクテリアを探す。まずは国内にあるもののデ ータベースから優先して検索する。海外では入手に時間やお金を取られてしまうから だ。今回はErwinia Carotovoraというバクテリアだが、幸いにも国内のデータベース のJFCC-Bacteria(図1)で2件ヒットする。MAFFにあると表示されて一瞬戸惑ったが 、何と農林水産省のことだ。筑波にある研究所に電話で連絡を取り、相談してなんと か2週間程度で入手できそうでよかった。
図1 JFCCデータベース
実験も一段落し、研究室に戻るとまた新しいメールが届いてるので返事を書いてか
ら、ネットニュースに目を通す。まずは学内のニュースグループからチェックする。
いつものように気が向いた物にはレスポンスする。こうやってるうちに距離的に離れ
た学部の教員や学生とも気があって、今では年に数回は一緒に酒を飲むようになった
。メンバーは理学部や工学部といった理科系の学部だけでなく、文学部や政治経済学
部といった文系の学部の学生等がいて、バラエティに富む。コンピュータには皆詳し
いので、困った時や新しい機種を購入するときには相談にのってもらう。
昼食の時間はやすらぎの時間である。食後は、パソコンにのんびり向かってWWWで
新聞社のニュースを読んだり、ネットニュースで趣味のニュースグループを読んだり
する。以前は生物関係のニュースグループである、bionetニュースグループを読んで
いたが、あまりにも量が多くなって読むのを諦めた。ただし、日本語の生物のニュー
スグループであるfj.sci.bioは、量が少ないので全部読むことができる。
最近クローニングした抗体遺伝子のL鎖の塩基配列が解明したので、ホモロジーサ
ーチを行う。最近では、WWWで必要事項を書き込んで塩基配列データを放り込めば結
果がメールで返されてくるので非常に便利である。マニュアルを見なくても使用でき
るし、間違えても修正がしやすいので、あわてることが少ない。またかつては、UNIX
マシーンにtelnetして遺伝子データを解析することが多かったので、他人にやり方を
教えてもなかなか理解してもらえなかった。結果として私自身がサーチャーとして頼
まれることが多かった。今では、WWWでのやり方を1度経験してもらうと、まずは再
び尋ねられることはなく、嬉しい限りである。誰でも簡単にインターネットが利用で
きる時代になったことを、痛切に感じる瞬間である。農林水産省のDISCサーバ(http://www.dna.affrc.go.jp/)は比較的空いているので愛用している。ホモロジーサー
チからギャップを考慮した高速ホモロジーサーチのMPsearchを選択して、データを送
る(図2)。10分程度でMPsearchの結果がメールで帰ってくる(図3)。すべてのD
NAデータベースに総当たりで検索をかけて10分しかかからないのだからスパコン
の威力には驚かされる。ホモロジーの高い配列の一覧から目的のL鎖はκ鎖であるこ
とが分かる。
| 図2 ホモロジーサーチ(MPsrch) 入力画面 | 図3 ホモロジーサーチの結果 |
午後3時に研究仲間の友人が訪ねて来た。彼のメールアドレスを偶然知って、メー
ルを出したのだが返事が来なかった。ここぞとばかりに送ったメールを本人に見せて
(うっ ちょっとむなしいぞ)理由を尋ねたら、「線は引かれたけどまだ使ってない
。」との返事。最近は年賀状でメールアドレスを知らせてくる友人や知人がいて、そ
こからメールの交換が始まることがある。しかしまだまだ使える人は少ないようであ
る。彼には、極力早くInternetが使えるようにセットアップをお願いして、別れた。
文献を読んでいて分からない用語にぶつかったり、新しい文献が必要なときは迷わ
ずWWW Entrezをチェックする。図書館まで行かなくてよいので重宝する。得られた結
果もテキストではなくHTML形式で保存しておけば、後からでも関連文献をWWW Entrez
で調べられるのがよい。Entrezは、Medlineのうちの分子生物学分野の論文のみをセ
レクトしたものだが、私の研究分野では、必要な文献をほぼカバーしている。もっと
もたまにはMedlineでチェックして、Entrezでのもれがないことを確認するのも大事
ではあるが。そういえばCD版Entrezが5枚になったので、これ以上の枚数の増大には
耐えられずついにCD版はなくなるそうだ。今後はInternet経由の利用のみになるとか
。時代の変化をかみしめる。
自宅に戻ってから、重要なメールの返事が来てないことに気が付いた。そこで自宅
のパソコンと28.8Kbpsのモデムを使って大学の計算機センターに電話してPPP接続を
行いメールをチェックする。それを見ていた子どもがインターネットで調べたいこと
があるというのでついでにNetscapeを立ち上げていくつかのサーチシステムにアクセ
スして分からないことを調べる。まさに困ったときのインターネット頼みであるが、
まさかと思うようなことも調べられて重宝してる。本当は、自宅からのInternetへの
アクセスを許すと、自宅にも仕事を持ち込むことになるので基本的には使うまいと決
心していた。しかし週明けの月曜日に処理するメールが多い事と、急ぎのメールを研
究室で待つのが辛くなり、計算機センターのPPPサービス開始にともなう接続テスト
者募集の案内に気持ちが一転。買い換えたモデム(14.4Kbps)をさらに買い換え、自
宅でも使えるようにセットアップしてしまった。28.8Kbpsの速度は速いと感じたが、
いつの日かきっと遅く感じる時がくるだろう。おそらくISDNを導入するだろう。また
移動体通信によるInternet接続もやりたいものである。速さと便利さに対する欲望は
きりがなさそうである。今日もまたパソコン貧乏に、、、