第3章 ネットワークへの接続

コンセントを探す

金本 茂
 Macintoshを使って,ただその中で文章を書いたり絵を描いたりということ に飽きたらず,同じ建物の中の他のコンピュータとの間でデータの交換をし たい,あるいはインターネットの荒海に乗り出してゆく.いずれの場合で も,読者の方の興味が目の前のMacintoshを超えた瞬間に必要になるのが,外 界へとつながる「コンセントを探す」ことである.電話や100Vの電源などと 違って,残念ながらコンセントにつなぐだけでネットワークが利用できるわ けではない.いくらかの設定が必要である.この設定を行うためには,少々 技術的でややこしいのだが,つなぐ先のネットワークについての情報を調べ ておかなければならない.ここでは,MacintoshをIPネットワークに接続する ことに焦点を絞り,
1)まずコンセントを探し,
2)設定する内容を下調べし,
3)実際の設定を行う
までの手順について解説しよう.自分自身の所属する組織がすでにインター ネットにつながっているのであれば,コンセントへの接続と設定を行うだけ で,インターネットを利用することができるようになる.しかしコンセント がない,あるいは所属する組織がまだインターネットにつながっていない, といった場合には,個人的にインターネットに接続する方法があるので3章 「学術情報網やDDBJへの接続」,「個人での広域ネットワークへの接続」を 参照されたい.組織自体をインターネットに接続する方法については,管理 者の方に任せたほうがよい.


EthernetとLocalTalk

 コンセントを探すには,まずはプラグの形を確認しなければならない.こ こでプラグと言っているのは,Macintoshのネットワークインタフェースを示 す.Macintoshを使う場合,主な選択肢としてはEthernetとLocalTalkとがあ る.最近発売された機種には,Ethernetのインタフェースが内蔵されている ものがある.また,そうでない機種でも,増設ボードなどを利用することで Ethernetのインタフェースを装備することができる.このインタフェースを 利用してIPのネットワークに接続することができ,後述するLocalTalkを利用 する場合に比べて面倒がない,スピードが速いといった特徴がある.可能で あれば,LocalTalkよりもEthernetを利用することをお勧めする.

 どんなMacintoshにも,LocalTalkのインタフェースが装備されている. Macintoshの背面ののアイコンで示されるプリンタポートがこれである.専 用のコネクタを購入すれば,すぐにAppleTalkのネットワークを運用すること ができるので,このインタフェースを利用してIPのネットワークを利用する ことが可能である.ただし,その場合はLocalTalkとIPのネットワークとの間 にDDP-IPゲートウェイという装置を設置する必要がある.この装置は複数の Macintoshで共用できるものの比較的高価であり,さらにLocalTalk自体のス ピードもやや遅い.

 さて,まずEthernetとLocalTalkのどちらを使うかを決定しよう.

1)スピードはそれほど速くなくてもいい
2)プリンタポートは空いているか,すでにLocalTalkで使っている
3)DDP-IPゲートウェイをすでに持っているか,数十万という予算が使える
という条件のすべてを満たす場合にはLocalTalkを使うことができる.逆に, Ethernetのインタフェースを増設することができないMacintoshの場合には, LocalTalkを使わざるを得ない.しかし最近では,どんなMacintoshでも Ethernetに接続できるので,そうでない場合にはEthernetを使うことをお勧 めする.プリンタの共有などのためにすでにLocalTalkを使っている場合で あっても,全く独立してEthernetに接続してIPの機能を利用することができ る.このあとには,それぞれの場合について,少々技術的な内容および実際 の接続の方法について説明する.


Ethernet

 Ethernetは,同軸ケーブルやツイストペアケーブルといった「伝送媒体」 を複数のコンピュータで時分割で共有することによって任意の相手との間で のデータの伝送を可能にしているネットワークである.伝送媒体の上でデー タを送受信するスピード(媒体スピード)は10Mbpsである.しかし, Macintoshがそのまま1秒間に10,000,000ビットのデータを送受信できるとい うわけではなく,混雑の具合,さらには使っているMacintoshや相手のコン ピュータの処理能力によって,実際の伝送スピードは変わる.  同じくEthernetでも,物理的な伝送媒体の種類によっていくつかの種類の Ethernetが存在する.主に次の3種類のEthernetが利用されている. Macintoshの背面を見てほしい.最近の機種ではEthernetが内蔵されていて, Ethernetのポートはで示されている.このポートがある場合には,このポー トに専用のトランシーバ(Apple Ethernetトランシーバ)を接続することに よって,Ethernetに接続することができる.このトランシーバには3種類の製 品があり,それぞれ上記の3種類のEthernetに接続することができる.また, Ethernetが内蔵されていないMacintoshの場合には,増設ボードなどを用いて Ethernetのインタフェースを用意する.NuBus用のボード,LCなどのための ボード,SCSIに接続する周辺装置,変わったところではLocalTalkコネクタと 同じようにプリンタポートに接続する周辺装置などがある.Ethernetのポー トは,上記の3種類のEthernetそれぞれ異なった形状を持っている.Thick Ethernetは15ピンのコネクタで,カチャカチャと音のするスライダがついて いるのがこのコネクタの特徴である.Thin Ethernetの場合には,直径1cmほ どの丸いパイプ(BNCコネクタ)が突き出している.Twisted Pair Ethernet の場合には,電話のものより少し大きめのモジュラージャックである.

 「Thick」,「Thin」は媒体となっている同軸ケーブルが太い,細いという 意味である.Thick Ethernetは一番初めに開発されたEthernetであり,古く から利用されている(図1).かなり太めの同軸ケーブルをあらかじめ建物 内に敷設しておく.この同軸ケーブルは歴史的に黄色いケーブルであること が多いのでイエローケーブルなどと言われている.そして,必要になったと きに必要な場所に同軸ケーブルの横に小さな穴をあけて「トランシーバ」と いう装置をかみつくように接続する.トランシーバとコンピュータの間は 「トランシーバケーブル」で接続する.トランシーバやトランシーバ(AUI) ケーブルが高価だったり,同軸ケーブルの加工に専用の工具が必要であるな どといった理由で最近ではあまり利用されていない.しかし一度設置してし まえば非常に安定性が良いので,建物内の基幹ネットワークなどに利用され ている.

図1 Thick Ethernet

 Thin Ethernetでは,テレビの同軸ケーブルほどの太さの同軸ケーブルを利 用する(図2).Thick Ethernetが1本の長いケーブルを使うのに対して, コンピュータとコンピュータの間にケーブルを1本ずつ使う.ケーブルと ケーブルとはT型コネクタを使って接続し,T型コネクタの残り一端をコン ピュータに接続する.ひとつながりのケーブルの一番端のコンピュータに接 続したT型コネクタの余った端には,ターミネータという部品を差し込む必要 がある.トランシーバなどが必要ないので安価で,一時期よく利用されて た.しかし,新たにコンピュータを接続するためには一旦どこかの接続をは ずす必要があるが,ケーブルのどこかがはずれると全体の通信ができなくな るという性質があり,他のユーザに迷惑をかけることになるため,最近では それほど使われなくなった.

図2 Thin Ethernet

 Twisted Pair Ethernetでは,電話などに使われるツイストペアケーブル (より対線:2本ずつより合わせてあるケーブル)を利用する(図3). ケーブルの両端には,通常の電話のケーブルのモジュラープラグよりもひと まわり大きなモジュラープラグがついている.このケーブルを使って,コン ピュータと「ハブ」(Hub: 車輪の中心の部分をハブという)とを接続する. つまり,ハブを介して複数のコンピュータを接続する形になる.たった2台 を接続する場合でもハブを購入しなければならないという問題があるもの の,新規の接続が簡単,ケーブルの単価が安い,接続にあたって他に迷惑を かけないなどといった利点から,最近よく使われるようになっている.特 に,電話と同程度の配線で利用できることから,構内電話の配線を流用した り,構内電話とまとめてあらかじめたくさんのケーブルを敷設しておく(先 行配線)といったことも行われている.

図2 Twisted Pair Ethernet


LocalTalk

 LocalTalkは,Macintosh標準のネットワークであり,ごく普通のシリアル 通信用のインタフェースに専用のコネクタを接続することによって230.4kbps の媒体スピードのネットワークを実現している.AppleTalkの機能はすべての Macintoshに標準で搭載されているので,LocalTalkを利用することによっ て,プリンタの共有,ファイルの共有といったことがMacintoshであれば簡単 に実現できる.このLocalTalkを使ってIPネットワークを利用するには,DDP- IPゲートウェイという装置を必要とする.DDP-IPゲートウェイとは, AppleTalkの中心となるプロトコルであるDDP(詳しく言えばネットワーク層 のプロトコル)とIPとの相互の変換を行う装置である.LocalTalkおよび Ethernetのポートがあれば,同じLocalTalkにつながっているMacintoshから Ethernetおよびその先のIPネットワークを利用することができるようにな る.ただし,この装置は少々高価であるため,すでにLocalTalkに多数の Macintoshが接続されているような場合でなければメリットはない.従って, DDP-IPゲートウェイを利用してLocalTalkからIPネットワークを利用するとい う場合には,すでにMacintoshはLocalTalkに接続されていると考えられるの で,ここではLocalTalkへの接続方法については説明しない.また,通常の ユーザはDDP-IPゲートウェイの設置を考える必要はないが,もしも設置しな くてはならない場合があれば,「DDP-IPゲートウェイの設置」の項を参照さ れたい.

 DDP-IPゲートウェイの市販製品としては,FastPathおよびGatorBoxが古く から有名である.最近になってこれら以外の製品も発表されている.これら の製品は,DDP-IPゲートウェイというよりは,もともとAppleTalkのルータと して作られたものである.AppleTalkにはLocalTalkのほかに,Ethernet上の AppleTalkであるEtherTalkがあり,LocalTalkおよびEtherTalkの間のパケッ トのやりとりを中継するというのが本来の機能である.せっかくEthernetに つながっているのだから,この装置を利用してMacintoshからIPネットワーク を利用することができたら,という着想でDDP-IPゲートウェイの機能が付加 された.Macintoshは専用のドライバ(現在では,このあとで説明する MacTCP)を利用して,IPのパケットをDDPのパケットの中に入れてDDP-IPゲー トウェイに送る.DDP-IPゲートウェイではDDPのパケットの中からIPのパケッ トを取り出し,Ethernetに送り出す.Ethernetから来たIPパケットは逆の経 路をたどってMacintoshに届く.

最近になって、DDP-IPゲートウェイの機能をMacintosh上のソフト ウェアで行うソフトウェア("Apple IP Gateway")がアップルから 発売された。安価なソフトウェアなので、これまでのように高価な ハードウェアを購入する必要がなく、手軽である。しかし、ネット ワークを利用する人が一人でもいれば、このソフトウェアをインス トールしたMacintoshを動かし続けなくてはいけないという点が不便 である。

通常,接続されたEthernetに割り当てられたIPネットワークのアドレスのう ち,ある範囲のIPアドレス群をDDP-IPゲートウェイで利用する.Ethernet側 から見ると,この範囲のIPアドレスに対する通信はすべてDDP-IPゲートウェ イが代表して応答する.LocalTalkに接続されたMacintoshは,これらのIPア ドレスのうちの1つを自分のIPアドレスとして利用する.Macintoshが自分の IPアドレスを決めるには2つの方法があり,1つにはDDP-IPゲートウェイに 問い合わせて空いているアドレスを適宜割り当ててもらう方法(動的割り当 て),もう1つとしては,あらかじめこの範囲からIPアドレスを選んで Macintoshに設定しておく方法(静的割り当て)がある.Macintoshの設定の ためには,このどちらの方法を採るのかを知る必要があるが,これはDDP-IP ゲートウェイの管理者に聞く必要がある.


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