第4章 インターネットを使ったデータベースへのアクセスとサービス
ニュースリーダー
NewsAgentとNewsWatcher
宗像信生
さてここで,インターネットリソースのなかでも,とりわけ毀誉褒貶のはなはだしいニュースグループ(ユースネットと総称される)の登場である.この世界をかけめぐる巨大な壁新聞は,雑音レベルもきわめて高い.研究者にとっては気分転換にコーヒー片手に覗くというのが普通であり,「Unixにloginしてrnで読む」などというのならまずお断り,というのが正直なところだろう.幸いなことにMacintoshでは,ニュースリーダーというソフトを使って,片手のマウスクリックだけで読みとばすことができる.ここでは,NewsAgentとNewsWatcherの日本語版を取り上げるが,この世界ではよく知られているらしいNuntiusについては次章に日本語版の作者による解説がある.これらのプログラムでニュースを読むためには,机上のMacintoshがホストとニュースサーバ(NNTP)へ接続していて,MacTCPがインストールされていることが必要で,これをどうするかは,ここまで読み進んだ読者は当然おわかりのことと思う.
インストールと全グループリスト
NewsAgent v1.482(以下NAと略)はftp.nig.ac.jpから,NewsWatcher-J8(2.0b9)(以下NWと略)はftp.u-tokyo.ac.jpから,FetchによるFTPで入手できる.起動するとニュースサーバとホスト名や利用者のアドレスをまず聞いてくるが,NAではさらにパスワードを入力する必要がある.「操作」メニューで「パスワード保存」をチェックすれば,次回からは必要でなくなるが,同じパソコンを複数の利用者で共有する場合には問題がある.ニュースサーバへ接続すると,まずそのサーバが受け取っているすべてのニュースグループの一覧が現れる.もしこれが出ないときは,NAでは「ウインドウ」メニューから,「Full Groupを表示」,NWで「窓」メニューから「全グループを表示」を探してチェックする.サーバの管理者が適度に選択しているのが普通だろうが,それでも数百のグループ名が並ぶことは覚悟したほうがよい.「初心者のためのインターネット」("Zen and the Art of the Internet", B. P. Kehoe, Prentice Hall, 1993)によると,「まず理解すべきことは,ユースネットは有形の組織ではない」ので,初めは名前から内容を推量するしかない.生物学関係のグループは,bionetと sciに,コンピュータ関係はcompに,日本語によるグループはfjにある.なお,この世界一面に繁茂しているaltグループは,中毒することがあるのでお勧めしません(もちろん冗談です.もっと悪い冗談によると,これは,"Anarchists, Luddites, Terrorists"の略だそうです.しかし本来,裏の世界であったインターネットに,オルタナティブがこれほど賑わうというのもポストモダン的現象かもしれません.もちろん,alt.postmodernというグループもあります).

図1 NewsAgentの4種類のウインドウ
後方から,「全グループリスト」,「使用者の選んだグループのリスト」,「あるグループ内の記事一覧」とアクティブウインドウである「投稿記事」.
グループリストを作る
「ファイル」メニューから「新規リスト」(NA),あるいは「新規グループウィンドウ」(NW)をチェックして,めぼしをつけたグループを集めたリストを作る.実質的に活動していないグループも多くあり,NAではサーバに投稿記事がたまっているものだけが太字体で示されているので,この中から選んでドラッグするか,「編集」メニューから「リストに加える」をチェックするとリストの中に入る.NWでは記事の有無はわからないが,選択してドラッグするか,「スペシャル」メニューから「購読を予約」をチェックするとリストに入り,このときに記事数が表示される.NAでは,この予約の段階でサーバに大量の記事があると取り込まないことがある.たまった新聞を読む煩わしさを考えると,読み始めはかえってこのほうがよいかもしれない.生物関係で有益なのはbionetに属するグループで,現在約50グループあるが,中でも最も活発なのは分子生物の材料と方法を議論するbionet.molbio.methds-reagntsである.昨年の年間投稿数は6187で,さらに増え続けている.このようなグループをリストに加えるのはやや覚悟がいるかもしれない.もちろん,このグループリストはいつでも「リストから外す」または「購読から外す」をチェックして変更を加え,保存できる.いくつかのグループを複数のリストに分散させてもよい.
記事一覧とスレッド
個々の記事は,電子メールの「新規メッセージ」と「返信」のように,新しいテーマについての投稿と,既存の投稿に対する議論(同意,追加,回答,反駁,難癖などあらゆる内容がありうる)の2種類にわかれる.後者の場合,メールの返信を利用するので,メールヘッダのサブジェクトにReがついた形で投稿されることになる.このように同一サブジェクト名をもつ一群の投稿がスレッド(続き)と呼ばれている.スレッドは新聞の見出し,というより,中身はまだ見えないのだから週刊誌の広告のようなものであるが,読むか,読まないかの決断の唯一の手がかりともいえる.グループリストを作ったら,グループの1つを選択してダブルクリックで開くと,記事の一覧表がでる.記事には番号がふられていて,古いものから並んでいる.NAでは新しいものから並べることもできる.また両方ともスレッドごとにまとめて並べることもできる.NWでスレッドごとの表示を選ぶと三角マークがつき,クリックして拡げると個々の記事が表示される.興味のないスレッドの記事名が大量に並ぶことを避けるためのものと思うが,興味あるスレッドだったら最初の投稿だけを読むことはあまりないので,二度手間の感じもする.両方のプログラムとも連続する複数の記事を同時に開けることは可能だが,shiftキーを押しながら選択する必要があり,ここで残念なことに,マウスクリックだけで読むという条件が崩れることになる.またNWでは投稿の著者名も表示される.
記事を読む
この一覧表の1行をダブルクリックすると記事が開く.電子メールには,普通は読む必要のない長いヘッダがついてくるが,両方のプログラムともこのヘッダを飛ばして中身から表示させることができる.NAではこのときウインドウが一度でて消えるが,これは煩わしい.読むことになるとフォントが重大問題になるが,NAでは「ウインドウ」メニューから,NWでは「ファイル」メニューの「初期設定」の選択ボックスから,フォントとサイズを選ぶことができる.日本語を読むとすると,まともなフォントは細明朝しかなく,読みにくい英文字は覚悟しなければならない.大事な記事を後で読むことに決めたら,「新規保存」でテキストファイルとして保存する.もちろんプリンタに送って印刷もできる.表示と印刷のフォントは別々に設定できる.
記事のウインドウのクローズボックスをクリックすれば,一覧表に戻る.一度読んだ記事には既読のマークがつく.開くべき記事をすべて開いた後に,一覧表のウインドウを閉じると,グループリストに戻る.ここでは今開いたグループ名がNAでは太字体のまま,NWでは記事数がそのままに表示されている.ここで役立つのが,NAのウインドウの上部に並んだアイコンのうち右端のもので,これをクリックすると,グループ名の太文字表示がはずれて記事はすべて既読にされる.ほかは必要性を感じないが,これだけは価値あるアイコンである.NWの場合にはこれと同じことをするために,「ニュース」メニューから「既読にする」を選んでクリックしなければならない. 新聞の読み方と同じで人さまざまであろうが,私の体験では,「一度開いたら捨てる」ことが新聞の場合以上に必要なように思う.こうして,グループリストをすべて空にしたら終わりである.NWでは,終了時に自動保存するよう設定しておけば直ちに終了する.NAでは,ここでリストを保存しておかないと,「保存するか」のダイアログがでる.
スピードと操作性の比較
さて,ともかく小学生の日記のように,ためないことであるが,そのため毎日開くとしたら時間が大変気になる.そこで,NA,NWと,比較のためNuntius1.1.3E(NTと略)について,それぞれ同じグループを含むリストを作り,ほぼ同じような表示が得られる設定にしてリストのエイリアスをダブルクリックしてから,同一の記事のウインドウを開くまでの時間を測った.その結果,LCIIでは,NW=42, NA=60, NT=91(単位秒,6回の平均)であり,Centris 550では,NW=21, NA=38, NT=36(同上)であった.これでみるとNWが最も早く,NAとNTはかなり出遅れる.もちろんこれは立ち上げのみで,その後のスピードについては読み方,読み手の問題でもあるので,測定は困難であろう.
結論として,あまり速くない機種,あるいは複数の利用者で共有している場合は,NWがお勧めだろう.使用設定をいろいろと変更して好みにあった読み方をするには,NAのほうが選択肢に富んでいる.また,どしどし投稿したい人にはNAのEudoraとの連係が役に立つだろう.NTはこれらに比べるとかなり大きなプログラムになっており,さらにきめ細かい設定が可能である.筆者は,最近になってCentris 660AVを手に入れて英語版で動かしているので,ここではNTが快適である(この環境では,線虫のすべてを統合したACeDBのMacintosh版である MacAce2.0b4も十分使用できる).ここで本音をもらすと,今までのところ,fjの中ではどうしても読む必要のあるグループには巡り合っていない.「日本語のインターネットは本当に必要なのだろうか」というのは年寄りのつぶやきと思って聞き捨ててください…